高圧で受電する工場・ビル・店舗、太陽光発電設備などを持つ事業者には、電気の保安を担う電気主任技術者の選任義務があります。とはいえ、自社で有資格者を雇うのは容易ではありません。そこで使えるのが外部選任と外部委託の制度です。この2つは名前が似ていますが、要件が異なる別の制度です(経済産業省も違いについて注意を呼びかけています[5])。
この記事では、施設側の担当者・経営者に向けて、選任義務の内容・外部委託の費用相場・依頼の流れを、電気事業法の規定と公開されている相場に基づいて整理します。
そもそも「選任義務」とは
電気事業法では、自家用電気工作物を設置する者は、工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任しなければならないと定められています(電気事業法第43条)[1]。高圧(7,000V以下)で受電するキュービクルを持つ施設は、原則この義務の対象です。
選任の方法は大きく3つです。
- 自社選任:自社の有資格社員を主任技術者に置く
- 外部選任:他社の有資格者を選任する(一定の要件あり)
- 外部委託(保安管理業務外部委託承認制度):有資格の電気管理技術者・電気保安法人に委託し、選任を不要にする[2]
実務上、有資格者を自社で抱えにくい中小規模の施設では、外部委託が現実的な選択肢になります。
外部委託できる施設の条件
外部委託(承認制度)が使えるのは、主に受電電圧7,000V以下の次のような施設です[2]。
| 区分 | 主な上限の目安 |
|---|---|
| 需要設備(工場・ビル・店舗等) | 7,000V以下で受電 |
| 太陽電池発電所・蓄電所 | 出力5,000kW未満(電圧7,000V以下で連系) |
| 水力・火力・風力の発電所 | 出力2,000kW未満(電圧7,000V以下で連系) |
| その他の発電所 | 出力1,000kW未満 |
自社の設備が対象になるかは、受電電圧・設備容量で変わります。判断に迷う場合は管轄の産業保安監督部、または委託先に確認してください。
費用相場
外部委託の費用について、国の統計は見当たりません。費用は、設備の種類と容量で決まる「換算係数」(業界では「点数」と呼ばれます)に、委託先ごとの「1点あたりの単価」を掛けて考える方法が紹介されています[3][4]。換算係数は、技術者1人が受け持てる量(合計33未満)を決めるために国が定めた数字で、高圧で受電する施設では次のとおりです[6]。
| 設備容量(高圧で受電する施設) | 換算係数 |
|---|---|
| 64kVA以上150kVA未満 | 0.6 |
| 150kVA以上350kVA未満 | 0.8 |
| 350kVA以上550kVA未満 | 1.0 |
| 550kVA以上750kVA未満 | 1.2 |
| 750kVA以上1,000kVA未満 | 1.4 |
64kVA未満の小さな設備や、条件を満たして点検の回数を減らせる設備は、これより小さくなります[6]。1点あたりの単価は委託先や地域で大きく違い、ある電気管理技術者のブログでは、関東では1点あたり月25,000〜35,000円が妥当と言われている、と書かれています(筆者が紹介している相場の見方です)[3]。古い設備で漏電が多い、敷地が広い、遠方にあるなど、手間のかかる条件では上乗せされることもあります[4]。
見積もりを比べるときは、月次点検・年次点検、緊急時の出動、書類の作成などのどこまでが料金に含まれるかをそろえて比べてください。
依頼の流れ
外部委託は、おおむね次の流れで進みます。
- 問い合わせ・現地確認:設備容量・受電方式・設置状況を確認
- 見積もり:点検頻度・対応範囲を踏まえた費用提示
- 委託契約の締結:保安管理業務委託契約を結ぶ
- 外部委託承認の申請:管轄の産業保安監督部へ承認申請[2]
- 保安管理の開始:定期点検・年次点検・緊急対応
外部委託のメリットと注意点
メリット
- 有資格者を自社採用せずに法令上の保安体制を確保できる
- 採用・育成・退職リスクといった属人化を避けられる
- 点検・記録・行政対応をまとめて任せられる
注意点
- 委託先の対応エリア・緊急時の駆けつけ体制を事前に確認する
- 設備が承認制度の対象外(大規模・特別高圧)の場合は外部委託ではなく別の方法が必要
- 費用は容量・契約範囲で変動するため、範囲の明確化が重要
- 外部に委託しても、電気事業法上の義務を負うのは設置者のままです。経済産業省も「あくまで専門知識を有するところについて委託するだけで、電気事業法の履行義務は設置者にあることに変わりはありません」と明示しています[5]
太陽光・蓄電池など再エネ設備の対応
近年は、太陽光発電設備(5,000kW未満)も外部委託の対象に含まれます[2]。自家消費型の太陽光や蓄電池を導入した施設でも、要件を満たせば外部委託で保安体制を整えられます。再エネ設備は一般的なキュービクルと点検の勘所が異なるため、再エネ案件の実績がある技術者に依頼できると安心です。
まとめ
- 高圧受電の施設には電気主任技術者の選任義務がある(電気事業法第43条)
- 7,000V以下の一定規模なら、外部委託で選任を不要にできる
- 費用の目安は、設備の換算係数(点数)と1点あたりの単価から考えられる。見積もりは含まれる範囲をそろえて比べる
- 太陽光・蓄電池など再エネ設備にも対応可能
自社の設備が外部委託の対象になるか、費用がどの程度かを知りたい施設のご担当者様は、お気軽にご相談ください。
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出典
- 電気事業法 第43条(主任技術者の選任)。e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170(2026-10-06取得・一次情報)
- 経済産業省 関東東北産業保安監督部「外部委託承認制度」 https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/jikayou/e_gaibuitaku.html / 中部近畿産業保安監督部近畿支部「保安管理業務外部委託承認申請」 https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/jikayou/gaibuitaku.html (2026-05-29取得・一次情報)
- 電気管理技術者の備忘録「電気保安外部委託の市場価格と相場理解と値段の決め方」 https://denmasu2.com/36/ (2026-10-06取得・個人のブログ)
- スターメンテナンスサポート「電気保安点検の料金がどうやって決まるか」 https://www.ecopu.net/7815/ (2026-05-29取得)
- 経済産業省 関東東北産業保安監督部「外部選任と外部委託制度の違いについて」PDF(2026-08-29取得・一次情報)
- 平成15年経済産業省告示第249号 第3条(換算係数と上限33)PDF(関東東北産業保安監督部の掲載。2026-10-06取得・一次情報)
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