電気主任技術者の年収について、国の賃金の統計には、資格だけを取り出した区分がありません。厚生労働省の統計で近い職種を見ると、平均年収はビルの設備管理で452.3万円、発電所の運転管理や電気技術者で700万円台です(令和7年)[1]。同じ資格でも、どこで・どう働くかで、収入の水準も決まり方も大きく変わります。この記事では、公的統計と制度の一次情報をもとに、働き方ごとの収入の目安と仕組みを整理します。
国の賃金の統計に「電気主任技術者」の区分はない
国の賃金の統計(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)は職種ごとに集計されていますが、「電気主任技術者」という職種はありません。電気主任技術者として働く人は、実際の仕事に応じて、ビルの設備管理、発電所・変電所の運転や保守、電気設備の技術者、電気工事などの職種に含まれて数えられます。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、電気主任技術者は、電気技術者・ビル施設管理・発電所運転管理などの職業の「関連資格」として載っています。このため、年収は近い職種の統計で目安をつかむのが確実です。ただし、job tag の数字は、その職業を含むもう少し広い区分で数えたものです(下の表の「統計で含まれる主な仕事」)[1]。また、国の賃金の統計は雇われて働く人が対象で、個人で外部委託を受ける電気管理技術者(個人事業として施設の電気の保安を請け負う電気主任技術者)の収入は含まれていません[2]。
近い職種の平均年収(令和7年)
| 職種(job tag の職業名)と、統計で含まれる主な仕事 | 平均年収 | 平均年齢 |
|---|---|---|
| 発電所運転管理 発電所・変電所の運転・監視・点検・保守 |
707.3万円 | 42.3歳 |
| 電気技術者 電気・電子機器の開発・設計・生産や、電気施設の設計・工事の監督・維持管理 |
703.9万円 | 42.1歳 |
| 電気工事士 電気工事(電気設備の保安の仕事も含む) |
628.1万円 | 41.6歳 |
| 太陽光発電のメンテナンス 統計では機械・電気機械の整備・修理の仕事とまとめた区分 |
571.2万円 | 42.7歳 |
| ビル施設管理 ビル設備の管理(ボイラー・ポンプの運転なども含む) |
452.3万円 | 47.3歳 |
| (参考)一般労働者の全体 | 545.6万円 | 44.4歳 |
※平均年収は「きまって支給する現金給与額(6月の1か月分の給与。残業代を含む)×12+年間賞与その他特別給与額」。令和7年 賃金構造基本統計調査(民営・企業規模10人以上・短時間労働者を除く)で、job tag の「賃金(年収)」と同じ計算です。「一般労働者」は、短時間労働者を除く、雇われて働く人のことです[1][2]。
同じ「雇われて働く」でも、ビルの設備管理と、発電所や電気設備の技術者とでは、平均で250万円ほどの差があります。年齢・経験年数・会社の規模でも上下します。
経験年数で年収はどう変わるか
同じ職種でも、経験年数が長い人ほど平均年収は高くなっています(一人ひとりの昇給の幅を示す数字ではありません)。外部委託を受けるには、免状(国が交付する電気主任技術者の資格の証明)の種類に応じた実務経験が必要で(後述)、経験は収入にも働き方の選択肢にも効いてきます(単位:万円)。
| 経験年数 | 電気技術者 | 発電所運転管理 | ビル施設管理 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 378.2 | 395.1 | 311.2 |
| 1〜4年 | 505.9 | 438.0 | 355.6 |
| 5〜9年 | 591.3 | 481.6 | 402.1 |
| 10〜14年 | 669.9 | 575.0 | 418.7 |
| 15年以上 | 769.7 | 787.7 | 460.1 |
※残業代を含まない給与(所定内給与額)を12倍し、前の年の賞与を足した額です。残業代を含む最初の表とは計算の仕方が違い、同じ人たちで比べると低めに出ます(例:電気技術者の経験年数全体の平均は643.5万円で、最初の表の703.9万円より低い)。経験年数は、その職種の仕事をした年数(前の勤め先の分を含む)です。統計の区分は上の表と同じです(令和7年 賃金構造基本統計調査 職種第14表)[2]。
働き方で「収入の決まり方」が違う
高圧(交流で600Vを超え7,000V以下)で受電する工場やビルなど、事業用の電気設備を持つ施設は、保安を監督する電気主任技術者を選ぶ(選任する)ことが法律で義務づけられています(電気事業法第43条)[4]。電気主任技術者の働き方は、制度の上では次の3つに分かれます[3]。
- 自社選任:設備を持つ会社に直接雇われ(定年後に再雇用された嘱託なども含む)、その会社の主任技術者に選ばれる。収入は勤め先の給与
- 外部選任:派遣労働者や、ビル管理会社などの社員として、客先の施設(法令では「事業場」)に常時勤務し、そこの主任技術者に選ばれる。収入は勤め先の給与
- 外部委託:電気管理技術者(個人事業)や電気保安法人(保安を請け負う会社)が、施設と保安管理業務の委託契約を結ぶ。施設は国の承認を受けて、主任技術者を選ばずに済む。収入は、個人で受ける電気管理技術者なら委託料(受け持つ施設の数と規模で決まる)、電気保安法人に勤める技術者なら勤め先の給与
自社選任・外部選任や、電気保安法人に勤める場合は雇われて働く形なので、上の近い職種の統計が目安になります。自社選任と外部選任は、選ばれた事業場に「常時勤務」することが条件で、経済産業省の Q&A では週40時間(週5日・1日8時間)が目安とされています[3]。個人で外部委託を受ける電気管理技術者は自分で事業をする形で、収入の仕組みが大きく違います。
外部委託の収入の仕組み
受け持てる量には上限がある
外部委託では、施設ごとに、設備の種類と容量で決まる「換算係数」(業界では「点数」と呼ばれます)があり、1人が受け持つ施設の換算係数の合計は33未満でなければなりません(電気事業法施行規則第52条の2、平成15年経済産業省告示第249号第3条)。電気保安法人の場合は、担当する技術者1人ごとに同じ上限があります[4]。高圧で受電する施設の換算係数は、設備容量(受電設備の大きさ。単位は kVA)ごとに次のとおりです。
| 高圧で受電する施設の設備容量 | 換算係数 | この区分だけで受け持てる数 |
|---|---|---|
| 64kVA以上150kVA未満 | 0.6 | 54件 |
| 150kVA以上350kVA未満 | 0.8 | 41件 |
| 350kVA以上550kVA未満 | 1.0 | 32件 |
| 550kVA以上750kVA未満 | 1.2 | 27件 |
| 750kVA以上1,000kVA未満 | 1.4 | 23件 |
※表の件数は、その区分の施設だけを受け持つとした場合の試算です。64kVA未満の小さな高圧設備(非常用の発電装置がないもの)は係数が0.2で、さらにそうした設備の10か所分までは、換算係数の合計に数えなくてよい決まりです。条件を満たして点検の回数を減らせる設備や、太陽光発電所なども、表の係数より小さくなります(告示第249号第3条)[4]。係数が0.6より小さい施設も受け持つと、受け持てる件数は表の数より多くなります。実際には、移動の時間や、事故のときに2時間以内に駆けつけられること(主任技術者制度の解釈及び運用(内規)4.(9))なども、受け持てる数を左右します[3]。
経済産業省の資料(2021年)では、外部委託に従事する技術者は約2.6万人で、ばらつきはあるものの、1人あたりおおむね40〜65件程度の設備を受託しているとされています[5]。
委託料は「1点あたりの単価×点数」で考える
外部委託の料金について、国の統計は見当たりません。料金は、施設の換算係数(点数)に「1点あたりの単価」を掛けて考える方法が、保安会社や電気管理技術者の解説で紹介されています[6][7]。単価は人や地域で大きく違い、ある電気管理技術者のブログでは、筆者自身の単価は1点あたり月15,000〜18,000円・持ち点(受け持つ施設の点数の合計)20点で月30万円ほどで、関東では1点あたり月25,000〜35,000円が妥当と言われている、と書かれています[7]。
前者は筆者自身の実例、後者は筆者が紹介している相場の見方で、どちらも経費を引く前の売上です(前者の例を1年に直すと、経費を引く前で360万円ほど)。個人で受ける場合は、車の燃料代や、年次点検・緊急時に応援を頼む技術者への支払いなどがかかります[6]。同じブログでは、電気保安法人どうしの価格競争で、地域によっては単価が下がったという指摘もあります[7]。
兼業には慎重な審査がある
施設が国に外部委託の承認を申請するときの審査では、委託先の電気管理技術者がほかに職業を持っている場合、「特に慎重を期する」とされています(内規4.(3))。兼業によって時間や体力の面で保安に支障が出るおそれがあるため、と説明されています(主任技術者制度に関する Q&A 3.6)[3]。ほかに仕事を持っていると、承認の審査が厳しくなるということです。会社勤めを続けながら副業として受けることを考えている場合は、管轄の産業保安監督部に前もって確かめてください。
資格の種類で変わること
国の賃金の統計には、資格の種類(第一種〜第三種)ごとの区分もありません。種類で変わるのは、監督できる設備の範囲です(電気事業法施行規則第56条)[4]。
- 第三種:電圧5万ボルト未満の設備(出力5,000kW以上の発電所・蓄電所を除く)
- 第二種:電圧17万ボルト未満の設備
- 第一種:すべての事業用の電気設備(ダム・水路やボイラー・タービンの主任技術者が受け持つ範囲を除く)
外部委託の対象は、電圧7,000V以下で受電する施設や、7,000V以下で送配電網につなぐ(連系する)一定の出力未満の発電所・蓄電所に限られるため(施行規則第52条第2項)、外部委託の仕事はすべて第三種の免状で監督できる範囲に入ります。外部委託を受けるのに必要な実務経験は、第三種が原則5年、第二種が4年、第一種が3年で、講習の修了などで短くなります(告示第249号第1条)[4]。
収入を伸ばす考え方
- 実務経験を積む:統計でも経験年数が長い人ほど平均年収は高く、外部委託を受けるのに必要な実務経験も満たせるようになる
- 経験する設備の幅を広げる:発電所・変電所の運転や保守の職種は、統計上の平均年収も高い。太陽光・蓄電池など再エネ設備の経験も選択肢を広げる
- 働き方を選び直す:雇われて経験を積み、要件を満たしてから外部委託へ移る道もある。外部委託の売上は受け持つ点数と単価で決まり、車の燃料代などの経費も自分で負担する(雇われて働く場合との比較は記事「外部委託 vs 直雇用」)
まとめ
- 国の賃金の統計に電気主任技術者だけの区分はない。近い職種の平均年収は、ビル施設管理 452.3万円、電気技術者 703.9万円、発電所運転管理 707.3万円(令和7年)
- 経験年数別の平均では、経験が長い人ほど年収が高い(残業代を含まない計算で、電気技術者は経験0年 378.2万円、15年以上 769.7万円)
- 外部委託の収入は「1点あたりの単価×受け持つ点数」で考える。点数の合計は33未満という上限があり、単価は人や地域で大きく違う
- 資格の種類で変わるのは監督できる範囲。外部委託の仕事はすべて第三種の免状で監督できる
外部委託で働きたい方は、無料でご登録いただけます。
関連記事
本記事は、当サイトの運営メンバー・専門家の知見をもとに作成しています。→ 監修者・運営メンバー紹介
出典
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「発電所運転管理」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/302・「電気技術者」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/272・「電気工事士」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/46・「太陽光発電のメンテナンス」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/236・「ビル施設管理」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/95 の「賃金(年収)」(令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)。統計の見方は同サイト「職業情報提供サイト(job tag)に掲載している統計データについて」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/topics/detail/584(2026-10-06取得・公的統計)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第1表・第14表、産業大分類 第1表(産業計)。e-Stat(政府統計の総合窓口)(2026-10-06取得・公的統計)
- 経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」PDF・「主任技術者制度に関する Q&A」PDF(関東東北産業保安監督部の掲載。2026-10-06取得・一次情報)
- 電気事業法 第43条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170)/電気事業法施行規則 第52条・第52条の2・第56条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407M50000400077)/平成15年経済産業省告示第249号 第1条・第3条 PDF(2026-10-06取得・一次情報)
- 経済産業省 産業保安グループ電力安全課「電気保安人材の現状分析と取組の方向性について」(令和3年11月5日)PDF(2026-10-06取得・公的資料)
- スターメンテナンスサポート「電気保安点検の料金がどうやって決まるか教えます」https://www.ecopu.net/7815/(2026-10-06取得・保安会社の解説)
- 電気管理技術者の備忘録「電気保安外部委託の市場価格と相場理解と値段の決め方」https://denmasu2.com/36/ / 同「電気管理技術者の点数と年収について」https://denmasu2.com/002/(2026-10-06取得・個人のブログ)
コメント