電気主任技術者・電験三種は「やめとけ」?きつい理由と向いている働き方

電気主任技術者や、その資格試験の電験三種(第三種電気主任技術者試験)について「きつい」「やめとけ」と言われるのには、理由があります。電気主任技術者は法律で電気設備の保安の監督の責任を負い、事故のときは勤務時間外でも対応を求められることがあります。職場によっては交替勤務があり、資格を生かす職場の一つ、ビルの設備管理は、近い職種の統計では年収の水準が低めです。一方で、責任の重さを除けば、負担の多くはどこで・どう働くかで変わります。職場を選ぶ余地もあり、発電所の運転管理の仕事は、有効求人倍率(ハローワークで仕事を探す人1人に対する求人の数)が5.77倍(令和7年度)と、求人が仕事を探す人を大きく上回っています[1]。

「やめとけ」と言われる主な理由

よく挙がる理由を整理すると、次の6つです。1〜4は働き方の負担、5と6は独立にかかわる理由です。

  1. 責任が重い:電気設備の保安の監督を誠実に行う義務を、法律で負う
  2. 事故のときの対応がある:勤務時間外でも対応を求められることがある
  3. 夜勤・交替勤務がある:24時間動くビルや、多くの発電所は交替制
  4. 年収が伸びにくいと感じる:ビルの設備管理に近い職種の統計は、平均年収が低めで経験による差も小さい
  5. 資格だけでは独立できない:第三種の免状なら、原則5年の実務経験が必要
  6. 独立すると一人で抱えるものが多い:契約先探し、点検、事故のときの駆けつけを自分で担う

以下、資格を取る価値、1〜4、5と6(独立)の順に確かめます。

電験三種は取る価値があるか:近い職種の年収と求人倍率

取る価値は、資格をどの職場で生かすかで大きく変わります。国の賃金の統計に「電気主任技術者」という職種はなく、資格だけの公的な年収の統計も見当たりません[2]。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で電気主任技術者を関連資格に挙げる職業(電気工事士・太陽光発電のメンテナンスなども含む)のうち、保安の仕事に近い3つの職業の数字は次のとおりです[1]。

職業(job tag の職業名)と、統計で含まれる主な仕事 平均年収(令和7年) 有効求人倍率(令和7年度)
発電所運転管理
発電所・変電所の運転・監視・点検・保守
707.3万円 5.77倍
電気技術者
電気・電子機器の開発・設計・製造や、電気施設の設計・工事の監督・維持管理
703.9万円 2.43倍
ビル施設管理
ボイラー・ポンプなどの機械の運転、ビル設備の管理など
452.3万円 1.03倍
(参考)一般労働者の全体 545.6万円 —

※平均年収は、6月の1か月分の給与(残業代などの手当を含み、税などを引く前)を12倍し、前の年の賞与を足した額です。一般労働者の全体は、民営・企業規模10人以上の事業所で働く、短時間労働者を除く人の平均です(令和7年 賃金構造基本統計調査)[1][2]。job tag の数字は近い仕事をまとめた統計の区分で数えたもので、「電気技術者」には機器の開発・製造の技術者、「ビル施設管理」にはボイラーやポンプの運転など、保安以外の仕事も含まれます[1][2]。

「電気技術者」と「発電所運転管理」は、平均年収が一般労働者の全体を150万円以上上回り、求人も仕事を探す人の2.4〜5.8倍あります。一方、「ビル施設管理」は求人倍率が1倍程度で、平均年収は全体より約90万円低くなっています。電験を関連資格とする職種の間でも、年収と求人の多さは大きく違います。

第三種の免状で監督できるのは、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(ビルや工場の受電設備、発電所など)で、出力5,000kW以上の発電所・蓄電所は除かれます[3]。経済産業省の資料(2021年)によると、第三種が主に監督するのは出力5,000kW未満の発電設備や、ビル・工場・コンビニなどの設備で、そのうち9割程度は「外部委託」の形です[4]。外部委託は、法律で決められた電気主任技術者の選任(選ぶこと)の代わりに、施設が国の承認を受けて外部の技術者と保安の委託契約を結ぶ制度で、7,000ボルト以下で受電する需要設備(電気を使う側の設備)や、7,000ボルト以下で系統につなぐ一定の出力未満の発電所などが対象です。請け負うのは、電気主任技術者の免状を持ち個人で受ける「電気管理技術者」と、保安を請け負う法人(電気保安法人)です[3]。

雇われて選任されるのに法令上の実務経験の定めはありませんが(電気事業法第43条第1項、施行規則第52条第1項)、実際に選ばれるかは勤め先しだいです[3]。外部委託を受けるには実務経験が必要です。これから受験する人や合格したばかりの人は、どこで実務経験を積むかを考えておくと、年収にも独立の条件にもつながります。

理由ごとの実情と、向いている働き方

1〜4の実情と、負担を軽くできる働き方です。

1. 責任が重い

電気事業法は、事業用電気工作物(小規模なものを除く)を設置する者に、主任技術者を選ぶことを義務づけています(第42条第1項・第43条第1項。外部委託の施設は電気事業法施行規則第52条第2項で除かれます)。選ばれた電気主任技術者は「事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない」とされ(第43条第4項)、設備の工事や維持・運用に携わる人は「主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない」とされています(第43条第5項)[3]。外部委託で保安を受け持つ電気管理技術者や電気保安法人も職務を誠実に行う義務を負い、施設の側には委託先の意見を尊重する義務があります(施行規則第53条第3項・第4項)[3]。

電気主任技術者は、現場に安全の指示を出す立場です。保安を受け持つ人が職務を誠実に行う義務は、雇われていても外部委託でも同じです。働き方で変わるのは、相談できる同僚や上司がいるかといった職場の体制です。一人で判断するのが不安な人には、有資格者が複数いて相談先がある職場で経験を積む働き方が向いています。

2. 事故のときの対応・呼び出しがある

保安を受け持つ人には、働き方を問わず事故の対応が求められます。

  • 会社に雇われ、その会社の電気主任技術者に選ばれる場合(自社選任):経済産業省の「主任技術者制度に関する Q&A」は、正社員でない人を自社で選ぶときの条件として、その事業場に常時勤務すること(週40時間が目安)と、保安の監督の仕事に専念できることを挙げています。専念できることの例が、「勤務時間外の事故発生といった場合においても対応が可能である」ことです[5]
  • 外部委託の場合:施設が外部委託の承認を国から受けるには、技術者がふだん連絡を受ける場所(主たる連絡場所)から施設に「遅滞なく到達」できることが条件で、承認の基準を示した経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」は、これを2時間以内としています(施行規則第53条第2項第6号、内規の4.(9))。事故や故障の連絡を受けたら、送電を止めるなどの指示、状況に応じた臨時の点検、再発防止の指示や助言を行うことも、委託契約で定めます(内規の4.(7))[3][5]
  • 発電所の運転管理:job tag は、地震や災害などの緊急事態に備え、万一の場合は即応する体勢が必要だとしています[1]

応募や契約の前に、受け持つ設備の数や古さと、夜間・休日の連絡の受け方を確かめましょう。一人で夜間の連絡を受け続けたくない人には、当番を交代で組む会社が向いています。

3. 夜勤・交替勤務がきつい

夜勤や交替勤務の有無は、職場で決まります。job tag によると、ビルの設備管理の労働時間は原則8時間ですが、「交替制で1時間程度の早出や残業、休日出勤をする場合がある」とされ、ホテルなど24時間動いているビルでは交替制の勤務です。発電所の運転管理は、多くの発電所が365日24時間動いているため、交替制勤務が一般的とされています[1]。

最初の表で年収も求人倍率もいちばん高い「発電所運転管理」は、交替制勤務が一般的な仕事でもあります。夜勤を避けたい人は、求人票の勤務時間と、交替制や宿直の有無を確かめて日勤の求人を選びましょう。外部委託でふだん行う仕事は点検で、設備が動いている状態で行う「月次点検」、主に停電させて設備を止めて年1回以上行う「年次点検」、工事がある期間の点検などです(内規の4.(7))[5]。点検が中心なので交替制の勤務とは違うと考えられます。ただし、年次点検は施設の設備を止めて行うため、施設を止められる日時(休日など)に合わせることがあります。また、事故は夜間にも起こりうるため、夜間に対応することもあります。

4. 年収が伸びない・頭打ちに感じる

経験年数ごとの平均年収は、経験が長い人ほど高くなっていますが、上がり方は職種で大きく違います。下の表は令和7年に働いていた人を経験年数で分けた平均で、一人の人の昇給の幅ではありません[2]。

職業(job tag の職業名) 経験1年未満 経験15年以上
発電所運転管理 395.1万円 787.7万円
電気技術者 378.2万円 769.7万円
ビル施設管理 311.2万円 460.1万円

※残業代や夜勤などの手当を含まない給与(所定内給与額)を12倍し、前の年の賞与を足した額で、最初の表とは計算の仕方が違います(この計算での電気技術者の経験年数全体の平均は643.5万円で、最初の表の703.9万円より低くなります)。経験年数は今と同じ職種の仕事をした年数で、前の勤め先の分も含みます(令和7年 賃金構造基本統計調査 職種第14表)[2]。

経験15年以上の平均は経験1年未満より、発電所運転管理と電気技術者ではどちらも約390万円高いのに対し、ビル施設管理では約150万円の差にとどまります。ビルの設備管理を含む統計の区分は、経験による年収の差が小さくなっています。収入を伸ばしたい人には、次の道があります。

  • 発電所・変電所の運転・保守など、統計上の平均年収が高く、経験による差も大きい職種で経験を積む(交替制勤務が一般的です)
  • 要件を満たしてから外部委託に移る。個人で受ければ施設ごとの委託料が収入になり、受け持ちを増やせば増えますが、上限があります(次の節)。収入の目安は記事「電気主任技術者の年収・報酬」で解説しています

独立(電気管理技術者)は「やめとけ」か

理由の5と6にあたる、独立の条件と負担です。個人で施設と委託契約を結び、保安の仕事を受ける技術者を「電気管理技術者」と呼びます(施行規則第53条第3項)[3]。

  • 実務経験が必要:外部委託を受けるには、事業用電気工作物の工事・維持・運用の実務経験が、第三種なら原則5年必要です。住宅などの一般用の設備や、低圧の電線だけでつながる小さな発電設備(小規模事業用電気工作物)での経験は数えません[5]。免状を受けた後に「保安管理業務講習」を修了すれば3年、講習と「保安管理業務訓練」の両方を修了すれば2年になります。設備容量300kVA(kVA は設備の大きさの単位)以下のキュービクル式(受電設備を金属製の箱に収めたもの)など、条件を満たす設備を受け持つ場合は、5年・3年・2年のどれも1年短くできます。免状を受ける前の経験は2分の1で数えます(平成15年経済産業省告示第249号 第1条)[6]
  • 受け持てる量に上限がある:施設ごとに、設備の種類や容量、点検の回数などで決まる「換算係数」(経済産業省の資料では「点数」)があり、1人が受け持つ施設の換算係数の合計は33未満でなければなりません(同告示 第3条)[6]。33という値は、1人が月に働く標準の時間(1日8時間×21日=168時間)を、350〜550kVA(全国平均の300〜500kVAに近い大きさ)の需要設備1件の点検にかかる約5時間で割った33.6をもとに決められたと説明されています[4]。1より小さい係数の施設もあるため(例:64kVA以上150kVA未満の高圧の需要設備は基本が0.6)、件数では33を超えることがあります。経済産業省の資料(2021年)では、外部委託の従事者は約2.6万人で、ばらつきはあるものの、1人あたりおおむね40〜65件程度の設備を受託しているとされています[4]
  • 点検と事故対応が続く:需要設備の点検は原則毎月1回以上で(隔月や3か月に1回などでよい設備もあります。同告示 第4条)[6]、ほかに年次点検と事故のときの対応があります。こうした仕事は、契約した技術者が自ら行うのが原則です(内規の4.(7))[5]
  • 受け持てる場所に限りがある:原則として、主たる連絡場所から2時間以内に着ける施設に限られます(内規の4.(9))[5]
  • 副業として始めにくい:個人の電気管理技術者がほかに職業を持っている場合、国の承認の審査では「特に慎重を期する」とされています(内規の4.(3))。兼業による時間や体力の制約で、保安に支障が出るおそれがあるためです(Q&A の3.6)[5]
  • 契約先を自分で探す:委託契約は施設と結ぶため、契約先探しも自分の仕事です

実務経験は、雇われて設備の保安に携わるほか、外部委託の技術者の補助者として点検に加わる形でも積めます(点検など21件を1か月分として数えます。Q&A の3.1)[5]。契約先探しまで一人で抱えたくない人は、電気保安法人に勤めて外部委託の仕事をする道もあります。施設と契約を結ぶのは法人で、収入は給与です。担当する技術者には、個人と同じ実務経験の要件と受け持ちの上限があります(施行規則第52条の2)[3]。要件の詳しい説明は記事「電気主任技術者の『外部委託』とは」、独立までの流れは記事「電験三種で独立・開業できる?」で解説しています。

一方で、長く働けて、働き方も選び直せる

経済産業省の資料(2021年)によると、外部委託の従事者の年齢構成は、20代6%・30代8%・40代13%・50代16%・60代31%・70代以上27%で、60代以上が58%(約6割)を占めます(業界団体への聞き取りによる推計。数字は資料のとおりで、足すと101%になります)[4]。

  • 60代・70代でも働いている人が多い:70代以上も27%います
  • 将来は担い手が足りなくなる可能性がある:20代・30代は合わせて14%です。経済産業省の同じ資料は、2021年時点では外部委託の業界に入る人と辞める人の数がおおむね釣り合っている(業界への聞き取り)としたうえで、第三種の監督が必要な再エネ設備が増える見込みから、将来は第三種の電気主任技術者が不足する可能性があるとしています[4]。若い世代が少ないことからも、仕事を引き継ぐ人が求められるという見方ができます。再エネ設備の仕事は、記事「太陽光・蓄電池の電気主任技術者」で解説しています

働き方の主な形は次の3つで、雇われて経験を積んでから外部委託へ移ることもできます[5]。

  • 自社選任:設備を持つ会社に雇われ、その会社の電気主任技術者に選ばれる
  • 外部選任:派遣会社や、施設から保安の業務を請け負う事業者に雇われ、その施設に常時勤務して選ばれる(常時勤務が外部委託との違い)
  • 外部委託:施設は選任せず、電気管理技術者(個人)か電気保安法人と委託契約を結ぶ。技術者は複数の施設を点検などで受け持つ

雇われて働く形(直雇用)と外部委託の違いは、記事「外部委託 vs 直雇用」で比べています。

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まとめ

  • 「やめとけ」と言われる6つの理由は実際にあるが、責任の重さを除けば、多くは職場と働き方で重さが変わる
  • 責任:誠実に職務を行う義務はどの働き方も同じ。不安なら、相談先がある職場で経験を積む
  • 事故対応:どの働き方にもある。一人で抱えたくないなら、当番を交代で組む会社を選ぶ
  • 夜勤:24時間動くビルや多くの発電所は交替制。避けたいなら日勤の求人を選ぶ
  • 年収:「ビル施設管理」は平均452.3万円(令和7年)で、経験による差も小さい。伸ばすなら、発電所の運転・保守などで経験を積むか、要件を満たして外部委託へ
  • 独立:第三種は原則5年の実務経験が必要。受け持ちの上限や兼業の審査を知って準備する。電気保安法人に勤める道もある

関連記事

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出典

  1. 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「電気技術者」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/272・「発電所運転管理」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/302・「ビル施設管理」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/95 の「賃金(年収)」(令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)・「有効求人倍率」(令和7年度)・「労働条件の特徴」・「関連資格」。統計の見方は同サイト「職業紹介ページに掲載されている「統計データ」に関する留意事項」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/topics/detail/584(2026-10-06取得・公的統計)
  2. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 産業大分類 第1表(産業計)・職種 第14表(本文の職業名との対応:発電所運転管理=「発電員,変電員」、電気技術者=「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)」、ビル施設管理=「その他の定置・建設機械運転従事者」)、同調査の「調査の概要」(3 用語の説明)・「利用上の一般的注意」・「役職及び職種解説」。e-Stat(政府統計の総合窓口)(2026-10-06取得・公的統計)
  3. 電気事業法 第43条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170)/電気事業法施行規則 第52条・第52条の2・第53条・第56条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407M50000400077)(2026-10-06取得・一次情報)
  4. 経済産業省 産業保安グループ電力安全課「電気保安人材の現状分析と取組の方向性について」(令和3年11月5日)PDF。PDFの8ページ「第3種電気主任技術者の現状①(外部委託の現状)」・9ページ「第3種電気主任技術者の現状②(今後の影響)」・24ページ「(参考)外部委託の点数制度」(2026-10-06取得・公的資料)
  5. 経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」PDF・「主任技術者制度に関する Q&A」PDF(関東東北産業保安監督部の掲載。2026-10-06取得・一次情報)
  6. 平成15年経済産業省告示第249号 第1条・第3条・第4条 PDF(関東東北産業保安監督部の掲載。2026-10-06取得・一次情報)
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